社長の言葉が現場でズレる瞬間は、だいたい3パターンしかない
「ちゃんと伝えたはずなんだけどな」
多くの経営者が、同じ場面でこの言葉を口にします。朝礼、全体会議、Slack、1on1。言葉は確かに発せられている。それなのに、現場の動きはなぜか噛み合わない。
この問題は、熱量の問題でも、話し方の問題でも、社員の意識の低さでもありません。
ほぼ例外なく、構造の問題です。
経営の現場を見ていると、「社長の言葉がズレる瞬間」は、だいたい次の3パターンに収束することが分かります。
パターン①:ゴールが共有されていない
最も多いのがこのケースです。
社長はこう言います。
「もっとスピード感を持ってやってほしい」
現場は動きます。しかし数週間後、社長は不満を漏らします。
「いや、そういう意味じゃない」
ここで起きているのは、やる気不足ではありません。ゴール未定義です。
- 何をもって「早い」のか
- どの工程を削っていいのか
- 品質の下限はどこか
これらが一切共有されていないまま、「スピード感」という抽象語だけが投げられている。
現場はそれぞれの解釈で走ります。ズレるのは当然です。
パターン②:アクセルとブレーキを同時に踏んでいる
次に多いのが、この矛盾型です。
「挑戦していい」
「失敗は困る」
「自由にやってほしい」
「でも前例は守ってほしい」
社長本人にとっては、どれも本音です。しかし構造的には、同時成立しません。
現場に届くメッセージはこうです。
- 失敗すると怒られる
- でも挑戦しないと評価されない
- つまり、正解は「何もしない」
結果、空気が重くなります。意思決定は遅れ、確認作業が増え、誰も責任を取りません。
これは意識の問題ではなく、矛盾した命令系統の問題です。
パターン③:翻訳者が存在しない
三つ目は、少し気づきにくいパターンです。
社長は高い視座で語ります。
「中長期でのポジショニングを考えよう」
「ブランドとしての一貫性が大事だ」
言っていることは正しい。ただし、その言葉が現場の作業レベルまで翻訳されていない。
- 明日の業務で何を変えるのか
- どの判断基準が変わるのか
- 何をやめていいのか
この変換が行われていないと、現場は「分かったつもり」で何も変えられません。
ここで必要なのは、追加の熱意ではなく、翻訳の工程です。
ズレは「人」ではなく「構造」で起きている
ここまで見てきた3パターンに共通しているのは、誰かが悪いわけではない、という点です。
- 社長はちゃんと考えている
- 現場も真面目に受け取っている
それでもズレる。
それは、言葉が通る前提構造が整っていないからです。
多くの組織では、どのパターンのズレが起きているのかが、まだ特定されていません。まずはその点検が必要です。
御社ではどのパターンのズレが起きているでしょうか。現状を整理してみませんか。