COLUMNコラム記事

「全員が納得した素晴らしい会議」の翌日、現場が1ミリも動かない本当の理由。

あの会議を覚えているでしょうか。誰もが頷き、熱を帯びた議論が交わされ、最後には全員が同じ方向を向いていたはずのあの会議。それなのに、翌日、現場は昨日と同じように動いていました。

総論賛成、各論不動。この現象に、私は何度も立ち会ってきました。

特に多いのが、代替わりの場面です。次の世代の経営者様が、新しい理念を語ります。「これからは、もっと現場の声を大切にしたい」。会議室にいる誰もが、その言葉に共感します。

けれど、数か月が経っても、何も変わりません。理由は単純です。評価制度も、意思決定の実権も、以前のままだったからです。

現場の方々は、言葉ではなく、制度を見ています。どれだけ立派な理念が語られても、評価される基準が変わらなければ、行動を変えるだけのリスクを誰も取りません。むしろ、下手に動いて評価を下げるより、これまで通りに振る舞う方が、ずっと安全なのです。

私はこれを、複数の組織で繰り返し観測してきました。新しい言葉と、古いままの制度が同居しているとき、現場は必ず制度の方を信じます。制度こそが、その組織における最も強い「翻訳装置」だからです。

言葉だけを磨いても、現場は動きません。行動するための武器──つまり、言葉と一致した制度──が用意されて、初めて人は動き出します。

言葉の問題は、言葉だけでは解決しないのです。現場の事実と、制度の矛盾を見抜くことなしに、どれだけ美しいコピーを並べても、それは無意味です。

良い言葉を探す前に、まず何を「観測」するかを決めてください。


関連記事: なぜ評価制度を変えても、現場は何も変わらないのか – 同じ現象を、制度の3パターンから診断しています

この4回にわたるシリーズが、経営理念や組織の言葉にまつわる、皆様の小さな違和感に応えるものになっていれば嬉しく思います。

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