「御社の強みは何ですか?」と聞いてはいけない理由。
取材の現場で、私はもうこの質問をいたしません。「御社の強みは何ですか」「大切にされている価値観は?」
一度、この問いを封印してみたことがあります。理由は単純でした。この質問への答えは、たいていホームページに既に書いてある言葉と同じだったからです。借り物の言葉は、本人の口から語られた瞬間も、やはり借り物のままでした。
では、どう聞けばいいのか。今、私が代わりに使っている質問はこうです。
「2年前と今で、何が変わりましたか」
不思議なことに、この問いには、用意された答えがありません。相手は一瞬、言葉に詰まります。頭の中で、過去の自分と今の自分を、初めて並べて比べているのです。
そして、少し間を置いてから出てくる言葉は、いつもと違います。「そういえば、以前は◯◯だと思っていたけれど、今は違う気がします」。この「気がします」の中に、本物の思想が宿っています。
なぜこの問いが効くのか。「強みは何ですか」という問いは、答えの形をすでに決めてしまっています。相手は、その形に合う言葉を、記憶の中から探し出すだけで済んでしまう。一方、「2年前と今の差分」を聞かれると、相手は答えを検索するのではなく、その場で考えなければなりません。
問いが人物像を作るのではありません。時間軸こそが、人物像を浮かび上がらせるのです。
これは、私がこれまで携わってきた複数の取材を通じて、繰り返し確認してきたことです。「昔から一貫している思い」を聞いても、綺麗な建前しか出てきません。けれど「何が変わったか」を聞くと、その人が本当に大切にしているものが、変化という形で自然と浮かび上がってきます。
編集とは、綺麗な文章を書く技術ではありません。時間を編集する技術です。作られた美談ではない、本物の思想を社会に届けるための、ひとつのやり方なのです。
そしてこれは、個人のインタビューの話にとどまりません。人ではなく、会社も同じだったのです。
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この記事が、インタビューや取材の場面で「何を聞けばいいか」に悩まれている方の、小さなヒントになれば嬉しく思います。
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